企業の節税(1)

企業の節税(1/2)

ひとみ(微笑)

たま姉、こんにちは。

たまき(通常)

あら、ひとみ。こんな時間に珍しいわね、どこかの帰り?

ひとみ(通常)

うん。ダンナの確定申告の帰り道だよ。たま姉は相変わらず忙しそうだね。青色申告の相談とかで忙しいの?

たまき(ウインク)

まあね。3月は決算時期の会社が多いでしょ。中小企業の社長さんから、税金のこととかで結構いろんな相談が来るのよ。

ひとみ(疑問)

そういえば、ダンナの取引先の会社も決算だって言ってたな。でも、決算とか会計業務って税理士さんの仕事なんじゃないの?

たまき(通常)

もちろん会社の決算書を作成したり申告したりするのは、税理士さんや会計士さんの仕事ね。会社としては、利益相応の税金を納める義務があるわ。その年が黒字の場合は必要な税金を納めて終わりとなるけれど、赤字になった場合は決算時の納税で困るわよね。

ひとみ(喜ぶ)

そうだね。そこで、FPのたま姉の出番ってことになるんでしょ。

たまき(ウインク)

そういうことね。普段からリスクに対する準備をしておかないと、もしも大赤字になってしまった場合、事業が傾いたり最悪は会社が潰れてしまう可能性もあるわ。そうすると税金を納めることもできなくなるでしょ。中小企業ではいざというときのリスクマネジメントや退職金の準備をしていない企業がまだまだあるのよ。

ひとみ(納得)

へー、たま姉の話は勉強になるなー。普段から準備してればいいのに、どうして決算前になると会社の相談が集中するの?

たまき(説明)

それはね、利益が出ていればその利益分でリスク回避の準備や従業員の退職金準備、または役員退職金の準備をすれば、損金として経費で落ちるからよ。ただ、税法上の利益が出るかどうかは、決算前にならないと確定しにくいので、どうしてもギリギリのタイミングになってしまう会社さんが多いのよ。

ひとみ(悩む)

なるほどねー。その損金になる費用って、もしかして福利厚生費ってことで落とすんじゃないっけ?

たまき(驚く)

あら、よく知っているわね。ひとみの言う通り福利厚生費よ。ひとみも企業の会計について勉強してるの?

ひとみ(通常)

昔取った杵柄ってやつだよ。それにダンナが取引先の社長さんと企業の節税についての話をしたって言ってたから、ちょっと調べてたのもあるけどね。その社長さんの会社って今年はかなり業績が良かったみたいで、節税の話になったみたいなんだよね。

たまき(汗)

それで私に企業の節税について聞きに来たってことね。私から仕入れた情報をかずおさんに教えてあげようと思ってるんでしょ?

ひとみ(微笑)

ま、そういうことかな。

たまき(困る)

全く……あやかもそうだけど、ひとみもそういうところは妙にしっかりしてるのよね。

ひとみ(通常)

だって、うちのダンナの株も上がると思うとついついね。

たまき(怒る)

もう!そういう時はその社長さんをクライアントとして紹介してくれれば私がしっかり対応するわよ。

ひとみ(喜ぶ)

ごめんごめん。ダンナに今度たま姉を紹介するように話しておくからさ。

たまき(ウインク)

仕方ないわね。それじゃ少し付き合ってあげるわ。どんなことが聞きたいの?

ひとみ(通常)

それじゃお言葉に甘えて。まずは企業が納税するときの仕組みは何となく覚えてるんだけど、決算で利益が出た時は法人税、住民税、事業税が課税されるんだよね。

たまき(説明)

そうよ。法人税は税務署に、住民税は都道府県と市町村に対して申告・納税するの。事業税は都道府県に対して納税するものだから都道府県の住民税と同時に申告するのよ法人税は所得金額に対して課税される税金なの。でも決算時に言う利益というものは企業会計上の利益であって、法人税が課税される所得金額つまり税法上の利益とイコールでは無いのよ。

企業会計の利益(決算利益)
利益=収益−費用
所得金額(税法上の利益)
所得金額=益金の額−損金の額
企業会計の利益と所得金額の関係
企業会計上の利益≠所得金額
所得金額=確定した決算に基づく企業利益+[益金算入、損金不算入]−[益金不算入、損金算入]
益金算入
決算書上の利益ではないが、法人税法上は益金であるもの
損金不算入
決算書上の費用であるが、法人税法上は損金でないもの
益金不算入
決算書上の利益であるが、法人税法上は益金でないもの
損金算入
決算書上の費用でないが、法人税法上は損金であるもの
ひとみ(悩む)

あー、簿記を勉強してた頃のこと思い出してきたよ。

たまき(説明)

法人税というのは所得金額×税率によって税額が算出されるのだけど、そうやって算出された税額に対して更に税額控除特別税額が加味され、最終的な納付税額が決定するの。

所得金額×税率で基となる法人税額が算出されます。算出された法人税額から税額控除分を減額し、特別税額を加算すると納付すべき税額が算出されます
たまき(説明)

簡単に言うと、益金の額−損金の額の差を少なくすることが節税になるということね。個人の確定申告などでは損金にあたる経費を全て算入できるけれど、法人の場合は費目によって損金に当てられる額の上限が決まっているから、経費となるものを上手く組み込むことが節税につながるの。

ひとみ(疑問)

なるほどね。損金の上限が決まっているっていうのはどんなものがあるんだっけ?

たまき(説明)

例えば、個人事業の場合、交際費は全額必要経費となるけれど、法人の交際費は、損金算入額に限度(現行では360万円が損金算入限度額)があるし、他にも役員への賞与は全額損金に算入できないし、役員への退職給与は適正額を超える金額は損金にできないのよ。

損金不算入額の例:交際費の場合

期末資本金等 年間の交際費の額 損金算入限度額
1億円 以下 400万円以下 交際費の額×90%
400万円超 360万円 ※
1億円 以上 全額損金不算入

※400万円を超える額は不算入となり最大400万円までが損金算入限度額の算出対象となります

交際費の損金算入と損金不算入の計算例(資本金1億円以下の場合)

年間の交際費の額 損金に算入できる限度額 損金不算入の金額
300万円 300万円×90%=270万円 300万円×10%=30万円
500万円 400万円×90%=360万円 500万円−400万円=100万円 + 400万円×10%=40万円
計 140万円
ひとみ(納得)

へー。企業って経費を全額損金に算入できないから大変になるんだね。

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